どっぐらんの裏側

今まで書いた物まとめたり、ちょっと長めの独り言呟いたり。※無断転載禁止

いろは観察日記07


 五月七日(木)

 昨日の夜、いろはをちょっとつついてみた。そしたら青くなって、白くなって、最後に赤くなったわ。こう言っちゃ悪いんだけど、面白かった。
 色々と予想通りだったわ。私を部屋まで運んだ時、寝苦しそうだからと服を着替えさせたところで、我慢がきかなくなったんですって。半泣きで頭を下げるから、ぐずぐずに甘やかしておいた。他の誰かなら駄目だけれど、私にならいいのよ。いろはの狼部分が見られて、むしろ嬉しいくらいだもの。

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いろは観察日記04


 五月四日(月)

 昨日はいい運動が出来たわ。おかげでぐっすり眠れたし、目覚めも爽快。結構早い時間に目が覚めて、朝風呂にも入ったわ。途中でいろはも起きたみたい。洗面所に入ってきたから一緒に入る? って聞いたけど、もうフェリシア達が起きてきてるからやめておくって。本当に早起きしたのねあの子達。
 お風呂から出てリビングに戻ったら、ちゃっかりさなも混じっていた。なんでも昨日の映画が思いの外面白くって、どうせなら一話から見たかったんですって。朝食を作ってるいろはを手伝いながら、私も流し見。幼女向けだけどバトルシーンも結構あって、緩急もはっきりしてるから面白いのよ。今度私もちゃんと見てみましょうか。

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いろは観察日記03


 五月三日(日)


 昨日は予想に反してぐっすりだったわ。それで、今日はいい匂いで目が覚めた。甘酸っぱいイチゴの匂い。顔を洗う前にキッチンを覗いたら、いろはがジャムを作っていたわ。昨日下準備まではしてあったけれど、火を入れるのを忘れていたんですって。
 イチゴもそろそろ名残の時期ね。六月くらいまでは楽しめるけれど、早い種類は小粒のまとめ売りが始まってる。手作りジャムはその時期だけのとっておきだわ。

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いろは観察日記02


 五月二日(土)

 ……腰が痛い。
 あんなに乱暴に扱われたのは久しぶりだったわ。昨日、いろははやっぱり機嫌が悪かったみたい。理由は簡単。私が「どこにお嫁にやっても恥ずかしくない」なんて言ったから。
 なによ。そんなの言葉の綾じゃない。いろはを他の誰かに渡すつもりなんてないに決まってるでしょ。大体、腹が立ったならその場で言えばいいじゃない。それを後からネチネチと……そういうところは直した方がいいと思うわ。
 ……まあ、興奮はしたんだけど。

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いろは観察日記01


 五月一日(金)

 あまりにも暇なので日記をつける事にした。ただの日記は元々書いているので、これは観察日記。何を観察するかって? そんなの一つ……いえ一人に決まっているじゃない。

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ifマギレコ03


 全てを失った後に、一人の女性と出会った。その人は、終わりを告げる死神にも似た人だった。
 ――こんにちは。
 化け物に襲われ泣きじゃくるやちよの前に降り立ったその人の、場違いな第一声はそれだった。襲い来る者達を光の壁で軽くいなし、差し伸べる手に少しの躊躇い。困り笑顔の彼女はやちよを抱えたまま楽々と化け物を倒し、それからこう言ったのだ。
 ――あなたは何に絶望したのかな?
 その日は、祖母の命の期限を聞かされた日だった。

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ifマギレコ02

 

 ただひたすら想っていた相手を喪った時、同時に未来も失った気がしていた。命を捧げた願いは今となってはごみくず同然で、そこに少しの価値もない。いっそ死ねたら楽だろうに、志半ばで倒れた家族の事を思うとそれも出来ないままだ。神の存在を信じるわけではないが、自死して妹達と違う世界へ行くのも嫌だった。
 生きるために戦うのではなく、死なないために戦っている。あるいは諦めがつく程に強い相手を探しているのかもしれない。

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ifマギレコ01

 

 全てを失った後に、一人の少女を拾った。それは、全ての始まりとなる少女だった。
「七海さん」
 そっと。驚かせないようにかけた声は、あまりに小さく吐息のようだ。いっそ届くかどうかもわからないくらいの声量は、自分でも笑えるくらい震えている。
「……なんですか」
「そろそろ帰った方がいいよ。もう夜も遅いから」
 こちり、こちり。壁にかかった時計から、規則的な音が響いていた。短信が十一を過ぎたそれをちらりと見上げ、笑顔で促せば不満そうな顔。
「もう、電車がない気がします」
「どうかな。ギリギリ終電には間に合うかも」
「そうだとしても、この時間に一人じゃ補導される」
「塾だったって言えば平気だよ」

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